初心者必見|ウイスキーのピートとは?使う理由・風味の特徴・ピーティーな銘柄を紹介
バーテンダー/ブロガーのいのかず(@InoKazuBlog)です。
ウイスキーを飲んでいく中で、「ピート」という言葉をよく耳にしませんか?
ピートはウイスキーの風味を大きく左右する重要な要素で、必ず知っておきたい知識の1つです。
しかし、「ピートってそもそも何?」「どうやって使われているの?」と疑問に思った人もいるでしょう。
そこで今回の記事では、バーテンダーである筆者がウイスキーにおけるピートの役割や産地ごとの特徴、ピート香が感じられるおすすめのウイスキーなどを詳しく紹介します。
ピートについて詳しくなり、より確実なウイスキー選びができるようになりたい人は、ぜひ最後までご覧ください。
ウイスキーに使われるピートとは何か
ピートは「泥炭」とも呼ばれ、海藻や植物、水生生物が長い年月をかけて堆積したものです。
ウイスキー造りにおいては、大麦麦芽(モルト)を作る工程「製麦」で利用されます。
ピートはスコットランドを中心に採取されますが、実は日本でも北海道や福井県など、いくつかの場所で採取されます。
よりピートの魅力を知るために、使われ始めた起源やウイスキーの風味に与える影響など、詳しく見ていきましょう。
ウイスキー造りにおけるピートの起源や歴史
ウイスキー造りにおいてピートが使われることになった起源はハッキリと分かっていないものの、18世紀にはすでにスコットランドの多くの蒸溜所で使われていたそうです。
当時、スコットランドでは燃料として利用できる資源が限られており、木炭や石炭に比べてピートが入手しやすかったため、ウイスキー造りにおける麦芽乾燥時の燃料として使われていました。
ピートを使う伝統は現代においても続いており、特にシングルモルトウイスキーにピート香を求めるファンは多くいます。
ピートがウイスキーに使われる理由や与える影響
ピートがウイスキー造りに使われる最大の理由は、香り付けをするためです。
製麦する際にピートを焚くことで、フェノール類と呼ばれる化合物が大麦に移り、スモーキーな風味を生み出します。
特に、ピートを大量に使うスコットランドのアイラ島産シングルモルトウイスキー「アイラモルト」は、強烈なスモーキーさだけでなく、土っぽさや磯のような香りが特徴的です。
ピート由来の独特な風味をどれだけ付加するかが、蒸溜所ごと、ひいては銘柄ごとの個性につながっていきます。
ピートの使用量や燃焼時間の長さによって、風味の強さは大きく変化するよ!
「ピーティー」と「スモーキー」の違い
「ピーティー」と「スモーキー」は、ウイスキーの風味を表現する際によく混同される言葉ですが、それぞれニュアンスが異なります。
「ピーティー」は、ピート(泥炭)の原料であるヘザー・苔・土・海藻のようなニュアンスを伝えるための表現方法です。
正露丸やヨードチンキのような薬品香、海風を思わせる潮気、枯れた植物や土臭さなど、有機的な風味を指します。
一方「スモーキー」は、ピートを燃やした際に出る煙のニュアンスを伝えるための表現方法です。
草木が燃えたような香りや燻製香など、タール系の風味を指します。
産地によって変わるピート香の違いについて
ピート香は、ウイスキーの風味を決定づける重要な要素ですが、香りの特性はピートの産地によって大きく異なります。
では、内陸部のピートと沿岸部のピート、それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
産地ごとのピート香の違いを理解することで、同じピーティーなウイスキーでも、細やかなニュアンスの違いを感じ取れるようになれます。
内陸部のピートの特徴
スコットランドの内陸部にある「ハイランド地方」や「スペイサイド地域」で採れるピートは、後述する沿岸部で採れるピートよりも、ピート香が穏やかに感じられるのが特徴です。
これは内陸部の気候や植生、土壌に起因しています。
内陸のピートは海風の影響を受けづらいので、ドライでカラッとした、草木を思わせるピート香が付加されます。
沿岸部のピートの特徴
スコットランドの西部に位置する「アイラ島」などの沿岸部で採れるピートは、重くドッシリとしたパンチの強いフレーバーが特徴です。
内陸のピーティーさとは違い、海風の影響で湿り気を伴ったピート香と、薬品香のようなスモーキーさが付与されます。
強烈なピート香が特徴のアイラモルトについて
アイラ島で造られるシングルモルトウイスキー「アイラモルト」は、使用するピートに海藻や潮風の要素が含まれており、ソルティかつ湿った重めのニュアンスのスモーキーさがあるのが特徴です。
アイラモルトの中でも、特にスモーキーさの強い銘柄として挙げられるのが「アードベッグ」や「ラフロイグ」。
上記のウイスキーは、力強いスモーキーさと薬品香のようなピーティさを持ち、まさに「アイラらしさ」を感じさせる銘柄です。
アイラモルト最大の特徴である強烈なピート香は、好き嫌いがハッキリと分かれる要素ではあるものの、ひとたびハマれば抜け出せない沼のような魅力があります。
後ほど、アイラモルトを含めたピーティーなウイスキーをご紹介しますね!
ピート香の強さを測る指標「フェノール値」とは
「フェノール値」とはフェノール類の含有量のことで、ピート香の強さを測るための指標です。
製麦時に使用するピートの量や燃焼時間の長さによってフェノール値が決まり、数値が高いほどピート香は強い傾向にあります。
フェノール類の含有濃度は「ppm(parts per million)」という単位で表され、フェノール値が約55ppmの「アードベッグ」からは強烈なピート香が感じられます。
フェノール値は、ウイスキーにおけるピート香の強さを示す明確な指標であり、ウイスキー選びや味わいの理解に欠かせません。
「フェノール値が高い≒よりピーティー」ですが、多くの銘柄は数値どおりにピートの強さを感じるので、大雑把にppmが高いウイスキーはピーティーと覚えておきましょう。
代表的なスモーキー・ピーティーなウイスキーを紹介
今回は、スモーキーかつピーティーさが感じられるウイスキーを、風味の強度別に1銘柄ずつご紹介します。
他の銘柄やより詳しいピートの知識については、別記事でご紹介する予定です。
初心者はここから|ジョニーウォーカー ブラックラベル 12年
基本情報
生産国
スコットランド
分類
ブレンデッド
内容量・度数
700mL / 40%
キーモルト
- カーデュ
- クライヌリッシュ
- グレンキンチー
- タリスカー
- カリラ
主な受賞歴
テイスト
香り
複雑で華やかな香り。
スモーク、バニラ、スパイス、オレンジ、オーク、ハチミツ、ドライフルーツ。
味わい
クリーミーでなめらかな口当たり。
カラメル、バニラ、スモーク、ラズベリー、ドライフルーツ、スパイス、ほんのりハーブ。
余韻
ややドライめで長く続く。
シトラスの爽やかさ、スパイス、オーク、スモーク。
「ジョニーウォーカー ブラックラベル 12年」は、程よく柔らかさを感じるスモーキーさと深い甘さ、複雑な風味が楽しめます。
マイナスポイントがほぼ感じられない完成度の高いウイスキーで、価格・味わい・飲み方の汎用性など、すべての面で高水準です。
今までピート香のするウイスキーに挑戦したことのない人は、まずはここから試してみましょう。
後ほどご紹介する「タリスカー」や「カリラ」がキーモルト(味の核を決めるモルトウイスキー)になっているので、飲み比べもおもしろいよ!
次のステップはこれ|アードモア レガシー
基本情報
生産国
スコットランド
分類
シングルモルト(ハイランド)
内容量・度数
700mL / 40%
熟成樽
- 1stフィルバーボン樽
- クォーターカスク
主な受賞歴
テイスト
香り
若々しい爽やかな香り。
ハチミツ、バニラ、スモーク、土、スパイス。
味わい
口当たりは滑らかで、ドライな甘さ。
バニラ、レモン、モルト、若草、スモーク、スパイス。
余韻
ドライで、モルティでフレッシュなスモーキーさが程よく続く。
「アードモア レガシー」は、ピーテッドモルト80%とノンピーテッドモルト20%を合わせて造られる、フェノール値約14ppmのウイスキーです。
スコットランド北部にある「ハイランド地方」で造られており、本記事でご紹介した内陸部のピートに該当します。
やはりドライめで爽やかな、木を焼いたようなスモーキーさ、花や若草のようなピーティーさが特徴です。
「ティーチャーズ ハイランドクリーム」のキーモルトとしても有名!どの飲み方にもよく合います。
慣れてきたらチャレンジ|タリスカー 10年
基本情報
生産国
スコットランド
分類
シングルモルト(アイランズ)
内容量・度数
700mL / 45.8%
熟成樽
バーボン樽
主な受賞歴
テイスト
香り
フレッシュでしっかりとした香り立ち。
バニラ、ハチミツ、薬品香、しっかりめのスモーク、潮気、苔。
味わい
刺激的で厚みのある味わいだが、口当たりは滑らか。
バニラ、モルト、ライム、潮気、黒コショウ、スモーク。
余韻
モルトの風味とスモーキーさ、スパイシーさが長く続く。
「タリスカー 10年」は、特有のスパイシーさと潮気を感じるソルティさ、力強いピート香が特徴で、フェノール値約20ppmのウイスキーです。
スコットランド北西部に位置する「スカイ島(アイランズ)」で造られるため、沿岸部のピートに該当します。
スカイ島の荒々しい風土がそのまま反映された、海水のようなニュアンスをよく感じ、強いスモーキーさと相まってパンチは強めです。
次に紹介するアイラモルトよりもスッキリとしたピート感!飲み方はストレート・ロック・ソーダ割りがおすすめです。
アイラモルトを感じよう|カリラ 12年
基本情報
生産国
スコットランド
分類
シングルモルト(アイラ)
内容量・度数
700mL / 43%
熟成樽
バーボン樽
主な受賞歴
テイスト
香り
強いスモークもあるが、華やかさも感じる。
スモーク、レモン、モルト、ハーブ。
味わい
オイリーな口当たりで、複雑な味わい。
バニラ、モルト、スモーク、洋梨、ハーブ、シトラス、潮気。
余韻
ドライめで、爽やかなピートとスパイシーな余韻が長く続く。
「カリラ 12年」は、アイラモルトの中では比較的穏やかなピーティーさで、フェノール値は約35ppmです。
力強いタール系のスモーキーさと、ハーバルなピーティーさがありつつも、モルティな甘さやフルーティーな爽やかさがあって、とにかくバランスがよく取れています。
ピート感は強く感じられるものの、重い薬品香はあまりなく、アイラモルト入門編としてはよいでしょう。
入門なら約25ppmの「ボウモア」だろうと思う人もいるかも知れませんが、「カリラ」のほうが「アイラ感」がハッキリと得られます。どの飲み方にもよく合いますし、アイラモルトで僕が大好きな銘柄です。
ものすごいクセの強さ|ラフロイグ 10年
基本情報
生産国
スコットランド
分類
シングルモルト(アイラ)
内容量・度数
750mL / 43%
熟成樽
1stフィルバーボン樽
主な受賞歴
テイスト
香り
力強いヨード香のようなクセ。
スモーク、薬品香、潮気、革、バニラ。
味わい
オイリーでドッシリとしたコク。
モルト、バニラ、甘草、シトラス、オーク、スモーク、磯、正露丸。
余韻
スモーキーさとビターさ、スパイシーな余韻が長く続く。
「アードベッグ 10年」は、アイラモルトの中でもフェノール値が上位に位置し、約45ppmとなっています。
よりフェノール値の高いアイラモルトが存在しているものの、ドッシリとした重めのスモーク、薬品香、湿り気のあるニュアンスがあるため、クセの強さはアイラモルトの中でも最強クラス。
好き嫌いがハッキリと分かれる銘柄ですが、英国王室御用達のブランドということもあり、質の高さは保証できます。
独特の薬品香は、正露丸に例えられます!飲み方はストレート・ロック・ソーダ割りがおすすめ!
ピートに関するQ&A
ピートに関するよくあるQ&Aをご紹介します。
ピートについてのまとめ
今回の記事では、ウイスキーに使われるピートについて詳しく解説しました。
- ピート(泥炭)は、花(ヘザー)や草、海藻、水生生物が長い年月を経て堆積したもの。
- 製麦時に燃料として使われ、モルトにスモーキーなフレーバーを与える
- ピーティーはピートの原料を思わせる風味で、スモーキーはピートを燃やしたときのタール系の風味
ピートの知識は、今後ウイスキーを飲んでいくなかで必須になる知識です。
今後自分でウイスキーを選ぶとき、ピートの強さやピートによってもたらされるフレーバーによって、自分に合っているかどうかを見極められるようになります。
ピート感の強いウイスキーは好き嫌いがハッキリと分かれますが、沼にハマる中毒性のような魅力があるため、ぜひおすすめの銘柄も飲んでみてください。
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